EPISODE4 -麻莉香-

CHARACTER DESIGN & MAKING by chimo.


【PROFILE】

・小達 麻莉香 (こだち まりか)
・11月25日生まれ
・15-16歳 (高校1年生)
・152m / 40kg / B型


【DATA】

・有紗の双子の妹
高校も同じ。基本的にいつも一緒にいるので仲良し美少女双子姉妹だと評判。

・しっかりしている
昔から身体の弱かった姉の看病をしていた事もあり、年齢にしてはとても落ち着いている。
運動神経も良く勉強も出来るのでスクールカースト上位の美少女である。

・若林がうぜぇ
いつもいつも絶妙に間の悪い気遣いを寄越して来るのでいちいち気に障るらしい。




【EPISODE4 -麻莉香-】


双子の姉、有紗は昔から重い心臓病を抱えていた。


親は共働きで、なおかつ有紗の病気の事もあり常にピリピリしていたという。

昔から両親が不在の際、「有紗に何かあったら麻莉香が助けてあげるんだよ」と言われ続けていた。


しかしいくら献身的に有紗を支えようと両親は結局は有紗の事で頭がいっぱいで自分への感謝や褒美は二の次三の次だったそうだ。

有紗本人は自分を支えてくれた麻莉香の事は自慢の妹であり、大切に思っていた。
そして「いつも私の事ばっかりでごめんね」という謝罪も欠かさなかった。

いつだって自分に優しいのは有紗だけで、誰よりも「ありがとう」と「ごめん」をくれたのも他でもない有紗であった。


しかし積もり積もった不満は本人からの謝罪と愛だけではどうにもならないものだった。


表では優しくてしっかり者の妹を演じ、裏では有紗や両親への恨みや妬みでいっぱいだった。



そして高校生になった頃、有紗が学校の帰り道で発作を起こし倒れた事があったという。


すぐに救急車をと思い携帯電話を取り出したが、麻莉香の脳裏にはこのまま放置してやろうかという思いが過ぎった。


そこは河川敷の薄暗い橋の下だった。他に人気はない。すぐ近くに掛かり付けの病院もあった。駆け込んで助けを呼ぶ事だって出来た。


数秒間、何の感情もないまま、心臓を押さえ息を荒くする有紗を見ていたという。


その時、たまたまその付近をランニングしていた大学生が一人おり、二人の様子に気付き駆け付けてきた。


その大学生こそが、心だった。


彼はすぐに声をかけ、有紗を抱え病院に走った。


その際、麻莉香にも「一人で大変だったよな」と声を掛けたという。

麻莉香にとって、その言葉は何よりも嬉しいものだった。
やっと誰かが自分の痛みを分かってくれたんだと。

まだ齢16の少女には彼の登場は白馬の王子様か何かに見えた事だろう。


しかしそれは同時刻、命を救ってもらった有紗も同じだったのだ。


有紗はその後、元気になって以降は心の話をよくしてきたという。

そして麻莉香は、有紗に自分も心の事が好きだという事は言えずにいた。

優しい有紗の事だ、この事を打ち明けたら自分を応援してくれるかもしれない。そう思った。
しかしその度に両親の言葉が頭を過り後ろ髪を引かれ、言い出す事は出来なかった。



そうこうしている間に、心と有紗は順調に関係を深めていった。



月日は流れ、この4年後。


心と有紗の二人が結婚するとの報告を受けた時、麻莉香の中で何かが切れてしまった。


それが引き金となり、親からの愛や、自分の時間、そして好きになった人も、すべて有紗に奪われたと思い込み、感情が恨みに支配されてしまったのだ。

麻莉香は、その頃に両親ともろくに話しを付けないまま家を出てしまったという。



出ていく最中、若林とすれ違った。

彼には出会った日から、自分の中にある暗い部分を見透かされてるような気がしていた。

若林は咄嗟に麻莉香の腕を掴んだ。しかし数秒考えてすぐに離し、「元気でね」と笑い、お互い別の方向へと歩いて行った。


麻莉香は昔、「方向さえ間違えなければ逃げるのは正しい判断だよ」と若林に言われた事を思い出した。その頃はまだ自身も高校生だった事もあり、何を言っているのかわからず苛立ちしか感じなかったが、今ならわかる気がした。


家出した先でもすぐに雇い先は見つかった。容姿には自信もあった。利用できるものは何でも利用した。

その間も有紗からよく心配の連絡が来ていたが、それなりに返事はしていた。全て適当だったが。
一応生存報告はしていた方が面倒にならないだろうと思っての事だった。




それから6年後の事である。


有紗と心が事故で死んでしまったと、それを両親でもなく、知り合いでもなく、家に訪れた全くの見ず知らずの男に知らされる事となる。


すらすらとよく喋る優しそうな男だった。

男は養護施設の職員だと言う。本当かどうかはわからない。

その男は麻莉香に心と有紗の息子二人を引き取ってくれないかと持ち掛けて来た。


そして、この事は口外無用。誰にも言わないようにと口止めをされた。


もちろんそんなのは受け入れられるはずもなかった。きっぱり断るとその男は大金を提示し、黙って息子を引き取ってくれるならこれを毎月振り込むと言った。

そして、この件には反社会的勢力や国のお偉方が絡んでおり、断ると身の保証はないのだと話し、男は無関心そうな眼で麻莉香を見た。

おおよそ自分のような独り身の立場の弱い女を探しては、バレてはいけない何かを押し付けて操ろうとしているんだろう。


自分はそれに丁度良く、標的になってしまった。そう思った。


しかし麻莉香は子育ての経験などなく、同時に二人は無理だから一人なら要求を飲んでやってもいいと応えた。

すると男は機嫌よく笑うと麻莉香に息子二人のそれぞれの写真を見せた。


どちらも心と有紗の特徴を受け継いでるのは見てわかった。

しかし有紗と同じ髪色をした方の男の子には、鼻に大きな傷があった。


「こっちの綺麗な方の子で」


麻莉香はそう言い、紗一を引き取る事を承諾したのだ。


正直言うと子供も金も要らなかった。しかし引き取るのは紛れもなく昔好きだった男の息子なのだ。そう思うと、妙な高揚感があったのだという。



丁度その頃、麻莉香には半同棲している男性がいた。

紗一を養子にすると伝えてしばらくすると、自分も一緒に育ててくれると快く結婚に踏み切ってくれたという。


しかしいざ結婚してみると、受け取った金はその夫に全て牛耳られ、少しでも反発すると暴力を振るってくるようになったのだ。

夫は麻莉香の通帳に振り込まれる金の事をいつの間にか知っており、結婚したのもそれが目当てだったのだろう。気付けば金銭の譲渡は夫が仕切るようになっていた。

離婚を切り出そうにも、その金の事があるせいで麻莉香を離してくれる事は無かった。



その夫婦間に引き取られた紗一は、毎日その地獄を見ていた。



麻莉香は夫からのDVや、不正受給の事を誰にも相談できない不安、積み重なった過去への恨みでもはや普通の精神状態ではなかった。


紗一は齢を重ねる毎に、心に似てくる。


欲しくても欲しくても手に入らなかった男と、その息子である紗一。


紗一が10歳になる頃には、麻莉香はそれを重ねて見てしまうようになり、依存するようになってしまってた。

それを気に食わない夫は、そのうち紗一にも暴力を振るい始めたという。

麻莉香にそれを止めるすべはなく、いつもただそれを見ているだけか、自分も一緒に殴られるかの二択だった。


夫は家庭内で、紗一の事を「金蔓」と呼んだ。そこ以外に関心などない。



紗一は有紗からの遺伝の心臓病でたまに発作を起こす。


病院に連れて行くなり看病するなり、できたはずだった。


しかしそれさえも有紗を思い出し、麻莉香は目を背ける事しか出来なかったという。


もう誰を恨めばいいのかわからなくなっていた。



自分は逃げる方向を間違えた、そう思った。


まだ少し幼いが、心に似た顔。


麻莉香にはもう、それしか縋るものが無かったのだ。




→ 【EPISODE4 -嘉乃-】

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